エンディングノートを書きましょう
前稿「終末期医療についての希望」のところでも言及しましたエンディングノート。
「知ってはいるけれど、書いていない」という方が多いと思います。
「まだ早い」「面倒だ」「時間がとれない」
そんなあなたにお伝えします。
「書く気になれない」というあなたのそのハードルを越えるコツ
書くべきことの優先順位
エンディングノートを書く意味とその効力
書き始めよう、と思えない原因はどこに?
あなたが、「エンディングノートを書き始めよう」と思えない原因はどこにあるのかをちょっと考えてみましょう。
踏み出せない原因がわかれば、その障害を取り除くことができますよね。
「まだ若いし」「必要性を感じない」という方・・
あなたが今何歳であったとしても、明日、大きな事故にあうかもしれず、大きな病気が発見されるかもしれません。
そうなった時のことをちょっと想像してみましょう。
あなたに起きたことを心配してくれる人は誰ですか?
血液型、アレルギー、持病、既往症、服用中の薬など、医療関係者に伝えるべきことは、どこかにまとめて記載していますか?
もしも、余命わずかになったとしたら、どうしたいですか?
最期に会いたい人は誰ですか?
あなたが突然亡くなった後、誰かに解約手続きをしてもらわなければならないものには、どんなものがありますか?
普段あまり考えないこと、むしろ考えたくもなかったことを、あえて考えてみることで、これからのあなたの生き方について、あらためてじっくり考えるきっかけになるはずです。
「書くこと自体が面倒」「今から書いても、状況や考えが変わることもあるだろうし、そのたびに書き直すのは面倒」という方・・
まず、エンディングノートとはどんなものかを具体的に見てみましょう。
ちょっと大きな本屋さんに行けば、いろいろな種類のエンディングノートが並んでいます。
若い人向け、女性向け、など実に様々なものが、ネット通販でも手に入ります。
手書きしたものは、書き直すのが面倒だと思われる方は、USB版やCD版を買ってパソコンで作成すれば、修正も簡単です。
無料のダウンロード(Word)版もあります。
・Microsoft officeスタイルカタログ
http://recordasia.co.jp/funeral/free_endingnote.php
テンプレートと使い方ビデオも掲載されており、パソコン初心者でもできそうです。
・日刊葬儀新聞 ダウンロード版エンディングノート
http://recordasia.co.jp/funeral/free_endingnote.php
こちらは130ページもありますが、ちょっと書いてみたくなる項目建てで、個人的にはお薦め。
ただ今第3版配信中。
削除してほしいID、パスワード、削除方法を書き込むページもあります。
自分に必要と思うところだけを使ってもよいと思います。
預貯金などの金融資産は、種類や残高も増減しますから、私は、別途エクセルで一覧表を作っています。
市販のものやダウンロード版の項目だけ参考にして、自分流にカスタマイズしていくのもよいと思います。
一年に一度くらい見直して、加筆修正していくとよいでしょう。
ただし、パソコンで作成したものは、修正するたびに印刷しておかないと、家族の手に渡らないことになってしまうのでご注意。
とにかく、気軽にまず始める。
書けるところから書いていく。
それがコツです。
エンディングノートと遺言書 効力の違い
エンディングノートは、形式も内容も、自由に書くことができます。
でも、法的効力はありません。
エンディングノートは、元気なうちは、自分の備忘録や今後の計画作成のために活用するものであり、認知症になった時や終末期の希望、亡くなった後の様々な手続きについてなどを家族に伝える「長い手紙」のようなもの、と考えて下さい。
一方、遺言書には法的効力があります。
でも、遺言できる事項については、民法で「財産処分」や「祭祀主催者の指定」など、いくつかのものに限定されています。
「葬儀の方法」や「残される配偶者の介護や扶養の方法」「兄弟仲良く、などの遺訓」を、遺言書に記載したいというご希望があれば、法的効力はありませんが、「付言事項」として遺言書に記すことはできます。
でも遺言の内容は、亡くなってからしか明らかになりませんから、認知症になった時の介護や終末期医療のことなどは、エンディングノートに記載しておく必要があります。
財産分けなどについては、法的効力のある遺言書を作成することをお勧めします。
法的効力のある遺言書を書く前に、自分の考えをまとめるためにも、エンディングノートをまず書いてみましょう。
エンディングノートはどんな構成になっている?
ほとんどのエンディングノートは、次の4つの柱建てになっています。
1.自分史
「自分史なんて、人に読まれるのも恥ずかしいし、まだ人生振り返る年でもないよ」という方、多いと思います。
実は私も「自分史」のところはまだほとんど書いていません。
でも、「日刊葬儀新聞ダウンロード版」の項目を見ていくと、「幼少期の思い出」「担任の先生の名前」「最初の仕事に就いたきっかけ」「我が家の10大ニュース」など、記入しないまでもちょっと考えてみるのは楽しい項目もあり、その時々に自分はどんなことを考えていたのかを思い出し、これからを楽しみに思う気持ちも湧いてきます。
「祖父母の思い出」の項目では、「あれ、誕生年月日知らなかったな」など、親が元気なうちに聞いておかないとわからなくなってしまう事項に気づかされたりもします。
2.介護や医療に関する情報、希望
病名や余命の告知、介護が必要になった時、尊厳死、臓器提供、献体、などの希望については、家族で話すきっかけをつくることも大事です。
家族の意向を聞き出す前に、「自分はこうしたいと思う」と先に言い出すことで、きっかけをつくりましょう。
3.葬儀や埋葬についての希望
終末期医療についての希望と同様、葬儀や埋葬の方法についても、本人の希望が明確に示されていれば、遺された者は思い煩うことなく見送ることができます。
遺影の写真も、「これなら」と思えるものを、自分で選んでおきたいですよね。
4.財産、個人情報
金融資産や保険加入の状況については、書き記すことで、今後の貯蓄計画の立案や保険の見直しの必要性を検討するきっかけにもなります。
もしもの時に、残されたペットを誰に託すのかや、削除してほしいアカウント、解約してほしい定期購入物などを書き記しておくことも大事です。
書くべきことの優先順位
エンディングノートは、とにかく書き始めることが大事ですから、書きたいと思ったところからでよいのですが、どんな年齢の人でも、いつ何時危難に見舞われるかもしれません。
そう考えれば、まず優先順位の1位は、「医療や看護・介護に関する情報と希望」の項目です。
60歳前で、「財産もまだ変動するし、遺言書はまだ早い」と思っておられる方は、エンディングノートを書くことで、負債も含め自分にはどんな財産があるのかを確認し、これからのあなたの財政計画づくりに活かしてください。
後日の稿でも触れますが、負債のほか、もしも「連帯保証人」になっているものがあれば、必ずエンディングノートに書いておいてください。
あなたの家族があなたの遺したもので、大変な思いをするようなことにならないように。
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