親名義のままの不動産はありませんか?
亡くなった親の名義のままの不動産がある方。
先送りにしないで、自分が元気なうちに兄弟姉妹と話し合って相続登記を済まさないと、子どもの代で、大変なトラブルに発展する恐れがあります。
不動産の相続登記(相続人への名義変更)には、いつまでにしないと罰則が適用される、というような期限がありません。
そのため、相続登記をしないまま放置している方がおられます。
でも、それはトラブルのもと!
速やかに手続きに入らないと、どんどんややこしいことになっていきますのでご注意を!
ややこしいことを次世代に背負わさないために、自分の代で済ませてしまいましょう。
相続関係人が増えてしまってトラブルに!
具体例でみてみましょう。
A夫さんが亡くなりました。妻のB子さんは先に亡くなっています。
A夫さんには、長男C男、次男D男、長女E子の3人の子どもがいます。
相続人はC男、D男、E子の3人です。
相続財産はA夫さんがひとり暮らしをしていた家と土地のみでした。
C男、D男、E子の3人はそれぞれ別に住居を構えていたので、A夫さん名義の土地・建物は、空き家にしたまま、名義変更もせず放置していました。
その後も、亡くなったA夫さんあてに固定資産税納税通知書が送られてくるので、それは長男C男さんが支払うことにしました。
A夫さん死亡から1年後、長男C男さんが亡くなりました。
C男さんの相続人は、妻のF美さんと長男Gさん、長女Hさんです。
さらに1年後D男さんが亡くなりました。
D男さんの相続人は、妻I枝さんと長男Jさん、次男Kさんです。
さらに半年後に、A夫さん名義の土地を買いたいという人が現れました。
固定資産税を支払ってきたC男さんの妻F美さんは、売却手続きを進めたいと考えました。
しかし、土地・建物の名義は、亡くなったA夫さんのままです。
このままでは売却手続きは進められません。
相続による名義人の変更をするためには、相続関係人全員の実印と署名が必要です。
A夫さんが亡くなってすぐの時点であれば、相続関係人はA夫さんの子どもであるC男、D男、E子の3人でしたから、この3人で話し合って相続財産の分配のしかたを決めることができました。
ところが、土地を買いたいという人が現れた時点では、C男さんとD男さんは亡くなってしまっているので、A夫さん名義の土地・建物の相続関係人は、F美さん、Gさん、Hさん、I枝さん、Jさん、Kさん、E子さんの7人に増えてしまっているのです。
ただ人数が増えただけでなく、A夫さんの子どもであるE子さんからすれば、A夫さん名義の土地を誰の名義で相続登記をして、売却益をどのように分けるかの話し合いをする相手は、義理の関係である兄嫁2人と甥・姪たちということになります。
固定資産税を支払ってきた長男の故C男さんの妻F美さんにも言い分があり、話は簡単にまとまりそうにありません。
しかも、故D男さんの子どものJさんは音信不通で行方不明状態。とても実印を押して署名してもらえるような状態にない。
結局、相続登記はできず売却もできない、ということになってしまったのです。
その後F美さんも亡くなり、C男さんのこどものGさんが、固定資産税を支払い続け、老朽化したA夫さん名義の建物は倒壊の恐れが・・・。
建物の解体には費用がかかるが、誰がそれを負担するのか?
もし倒壊して誰かに損害を負わせることになったら賠償責任も負うことになってしまう。
Gさんは深く悩み、「親父(C男さん)。どうして元気なうちに、兄弟で話し合って、じいちゃん(A夫さん)名義の土地・建物の始末をつけておいてくれなかったんだ」と嘆くことになってしまったのでした。
話し合って決めたはずなのに、登記をしていなかったためにトラブルに!
甲夫さんが亡くなりました。
相続人は妻と、長男、次男の3人です。
相続財産は、甲夫さん名義で、甲夫さんと妻、長男の3人で暮らしてきた土地・建物のみです。
甲夫さんの葬儀の後、妻、長男、次男で話し合い、長男が実家である甲夫さん名義の土地・建物を相続し、母親(甲夫さんの妻)の面倒はこれからも引き続き長男がみることとしました。
こう決めた時点で、甲夫さんの妻、長男、次男の3人で、遺産分割協議書を作って実印を押し署名をして、甲夫さん名義の土地・建物を長男へと相続登記を済ませておけば、何の問題も起きなかったのに、こうした手続きをしないままでいました。
数年して故甲夫さんの妻が亡くなりました。
甲夫さんが亡くなった時の話し合いで、実家の土地・建物は長男が相続すると決めたことに、納得のいかない思いのあった次男は、母親の葬儀の後、長男に対して、「父親の財産の半分は、自分も貰う権利があるはずだ。実家の土地を買いたいという人がいるから、売って現金を折半しよう」と言い出しました。
長男が、「あの時決めたじゃないか。約束通り母親の面倒も見てきたし、固定資産税も自分が払ってきたんだ。」といっても、遺産分割協議書も作っていない、相続登記も済ませていないのですから、長男が相続するというその「約束」を証明するものは何もないのです。
二親が亡くなって兄弟姉妹だけになると、みんな自分の言い分をはっきりと口にしだして譲らなくなり、どんどん深刻な争いになってしまう。
それは稀な例ではありません。
もしも、相続手続きを済ませないままのものがあるなら、速やかに手続きを進めましょう。
時がたつほど権利関係は複雑になり、人の心も変わり、トラブルの種が増えます。
厄介なこと、面倒なことを次の世代に遺さない。
それが終活の極意です。
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