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不動産を相続する前に、知っておきましょう

前項で、亡くなった親の名義のままの不動産がある方は、速やかに相続登記手続きをしましょう、とお伝えしました。

 

今回は、不動産を相続した後、その財産が次世代への重い負担となってしまわないようにするための、注意点をお話しします。

 

特に、「3つ目の注意点」は必見ですよ!

共有は避ける

親が亡くなって、親が所有していた不動産を、複数人の子どもが相続することになった場合の課題について考えてみましょう。

 

相続人間で、すぐに売却をして売却代金をもって遺産分割をする(換価分割)という合意ができている、売れる当てもあるというのでない限り不動産を共有名義とするのは避けましょう

 

なぜなら、共有名義の不動産を売却する時には、持ち分割合には関係なく共有名義人全員の同意(了解)がなければ売却や活用など(共有物に変更を加える行為)ができないからです。(民法251条)

 

とりあえず共有にしておいて、土地の活用方法は後から考えようなどと思っても、兄弟姉妹のうち一人は売却しようと言い、一人は貸し駐車場として活用しようと言って、意見が折り合わないということになれば、売却も活用もできないということになってしまいます。

 

そうこうしているうちに、兄弟姉妹が次々と亡くなるということになると、ここでまた相続が起きて、相続人がどんどん増えて権利関係が複雑になり、ますます合意をとって売却や活用をすることが難しくなる、という泥沼に陥ることになってしまうのです。

空き家管理と賠償責任

不動産を相続した時の課題の二つ目は、空き家管理の問題です。

 

親が住んでいた家、相続したけれど誰も住む予定もないので、空き家にしたままにしている、という方も多いのではないでしょうか。

 

土地や建物などの不動産を相続した人は、当然ながら、相続した不動産にかかる固定資産税を支払わなければなりません
住宅の敷地の場合には、固定資産税は最大6分の1に軽減されます
そのため、住宅を解体せずに空き家のままにしている方が多いのが現状です。

 

このため、倒壊しそうな危険な空き家など周辺環境に著しい悪影響を及ぼす「空き家問題」に対処するために、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました

 

「倒壊の危険」や「衛生上有害」「景観を著しく損なう」などの状態にある空き家を、自治体が「特定空き家」とみなして、「改善指導」を行います。
所有者がこれに応じないと、固定資産税の軽減対象から外されます。
それでも改善されない時には、「改善命令」が行われ、それにも応じなければ「行政代執行による強制解体」が行われ、その費用は空き家の所有者・管理者に請求されることになるのです。

 

では、「特定空き家」として「改善指導」が来るまで放置しておいてもよいのでしょうか?
いいえ。
空き家の所有者や管理者の責任が問われる危険は常にあるのです。

 

例えば、台風で空き家の瓦が飛んで近隣の住宅に被害を与えた、突風で敷地内の老木が倒れて隣家に損害を与えたなどという場合、「土地の工作物(建物)の設置又は保存」や「竹木の栽植又は支持」に瑕疵があることによって他人に損害を生じた時には、その空き家の管理者・所有者が修理代などの損害を賠償する責任を負うのです。(民法717条)

 

空き家を所有している場合には、定期的に通って家に風を通したり、庭木の選定や草刈りをするなど、適切な管理をすることができないと、近隣とのトラブルに発展することも稀ではありません。

 

空き家のまま残すのか、家を解体して更地にしておくのか、将来にわたるコストや手間、トラブルの可能性などまで十分に考えて決めることをお勧めします。

売却のチャンスがあった時には、半端に土地を残さない

不動産を相続した後の課題、3つ目は、売却のチャンスがあった時の注意点です。

 

あなたが、85坪の土地を相続していたとしましょう。
この土地を買いたいという人が現れました。
でもこの購入希望者は、「自分は80坪しか要らない」と言います。
残る5坪分は、道路にも面していないし変形です。
さあ、あなたはどうしますか。

 

答え:道路にも面していない変形の5坪分はタダでおまけに付けてでも、一緒に買い取ってもらいましょう

 

「えっ? 5坪分をタダにするの? そんなもったいない」なんて思ったらダメです。

 

なぜなら、道路にも面していない変形の5坪なんて、残しておいてもこの先まず売れませんし、活用のしようもありません。
つまり資産価値はほぼゼロです。
にもかかわらず、この5坪には固定資産税がかかるのです。

 

目先の損得勘定だけにとらわれると、売るに売れない土地の固定資産税を、子々孫々支払っていかなければならない事態になってしまうのです。

 

広い面積の土地を持っていて、切り売りしていった時にもこういう問題が起こります。

 

売却のチャンスがあった時には、半端に土地を残さない。
半端な土地はタダでおまけに付けてでも一緒に買い取ってもらう。

このことを、ぜひ覚えておいてください。

 

次世代に負の遺産を遺さない。
それが終活の極意です。

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