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商標? 知的財産権?

「知的財産権」という言葉を聞いたことがありますか?
著作権や特許権、実用新案権、意匠権、商標権などを「知的財産権」と言い、これらも相続の対象となる「財産」なのです。
ちゃんと相続手続きをしないと、財産として保護されなくなってしまいますよ。

ウチには関係ない?

「知的財産権? ウチには関係ないよ」と思われる方が多いかもしれません。

 

でも、何らかのご商売をされていた場合や、研究、デザイン、芸術活動等に携わっておられた方は、ご家族も気づいていなかったけれど、「知的財産権」をお持ちだったという場合があるのです。

 

なんと、私の父も商標権を持っていたということが、亡くなって2年がたとうという頃に発覚したのでした。

我が家の場合

私の父は、博士号を持つ工学系の技術者でした。
公的機関に定年まで勤めた後は、先輩が立ち上げた、国内外に技術指導をするコンサルタント会社を引き継ぐとともに、自分の専門分野の「技術」に関わる歴史についての調査研究を20年以上行ってきました。

 

十数冊の著作もあり、最期の著作は亡くなる4日前に出版された新書版で、お陰様で評判も良く、すぐに再版となったほか、中学校の国語の教科書に使用したいとのことで、許諾依頼も頂きました。
ですから、著作権があることは、私たち家族も知っていました。
(ちなみに、著作権は、特許権や商標権とは違って、出願や登録を必要とせず、著作物を創作したことで自然に発生するものですが、譲渡の際の対抗要件を備えるなどのために、文化庁への登録制度があります。)

 

ではどんな「商標権」を持っていたのか。

 

実は父は、定年後にコンサルタント会社の社長・会長を務める傍ら、ライフワークとなった自分の専門分野の技術に関連する歴史研究をする立場を表す肩書として、「○○○○研究所」主宰を名乗っていました。
晩年は会社の会長も退いていたので、最期の著作の肩書も「○○○○研究所主宰」となっています。
この「○○○○研究所」は、会社でもNPO法人でも一般社団法人でもなかったので、私たち家族は、単に肩書として勝手に名乗っているだけなのかと思っていました。

 

ところが、まもなく父の3回忌という頃になって、「(父が社長・会長をしていた会社を引き継いだ)後輩の△△さんから、『○○○○研究所』の商標を譲ってほしいと言われた。譲渡の前に相続の手続きが必要らしい、どうしたらいい?」と弟から電話がありました。
△△さんから言われて初めて、私たち家族は、父が「○○○○研究所」の名称を商標登録していたということを知ったのです。

新たな財産が発覚した時の遺産分割

さてさて「新たな財産の発覚」です。

 

こういう時のために、「遺産分割協議書」を作成する際には、一般的に、
「この協議後発覚した財産及び債務は、相続人○○○○が取得及び負担する」或いは「本遺産分割協議成立後に、新たな相続財産または債務が判明した場合には、相続人全員で協議する」といった一文を入れておきます。

 

我が家の場合、父の相続の際の遺産分割協議書では、新たな財産が発覚した時には母が相続することとしていましたが、商標権を譲って欲しいという相手方との協議や手続きは、弟にやってほしいと母が言いました。

 

そこで、私の出番です。
「被相続人○○○○(父)の遺産のうち、あらたに発覚した下記の知的財産権について、同人の相続人全員で分割協議を行った結果、相続人○○○○(弟)がこの遺産を取得することに決定した。」
という内容の「遺産分割協議書」を作成し、特許庁のホームページから「相続による商標権移転登録申請書」をダウンロードして必要事項を記入して作成しました。
商標権の相続による移転登録手数料は3,000円とお安いです。

 

商標権が相続人に移転したら、次は第三者への譲渡手続きです。
「譲渡証書」を添付して「商標権移転登録申請書」を提出します。これも特許庁ホームページから書式をダウンロードできます。第三者への譲渡による移転登録申請手数料は3万円です。

 

我が家の相続で「新たな財産の発覚」という、なかなか面白い経験をしました。

商標権の相続手続きをしないままでいると・・

ご商売をされている方などで、自社の商品やサービスを商標登録している方は、相続手続きや権利の期間更新手続きを忘れずにしておかないと、大事な商品名などを、独占して使用する権利を失うことになりかねませんので、ご注意くださいね。

 

最後に、知的財産権についてまとめておきます。
・特許権・・「発明」を保護。権利存続期間は出願から20年(一部25年)
・実用新案権・・物品の形状等の考案を保護。出願から10年。
・意匠権・・物品のデザインを保護。登録から20年。
・著作権・・文芸、学術、美術、音楽、プログラム等の精神的作品を保護。死後50年(法人は公表後50年、映画は公表後70年)
・回路配置利用権・・半導体集積回路の回路配置の利用を保護。登録から10年。
・育成者権・・植物の新品種を保護。登録から25年(樹木は30年)
・商標権・・商品・サービスに使用するマークを保護。登録から10年(更新あり)

 

著作権、育成者権(種苗法に基づく品種登録)、半導体集積回路の回路配置利用権については行政書士に、特許権、実用新案権、意匠権、商標権については弁理士にご相談ください。

 

※ちなみに「商標」と「商号」は違います。
「商号」はいわゆる会社名で、法務局で登記しますが、所在場所さえ異なっていれば、他人と同一の商号を登記することができます。
「商標」は商品やサービスを識別するための目印のことで、商標登録をすれば、その商品を指定商品(または指定役務)に使用することができる独占権を持つことができます。会社名(商号)も商標としても使用するなら商標登録しておく方が安心です。

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